児童相談所一時保護所における所持品検査の検証報告について
平成27年夏頃に、本市児童相談所一時保護所において、人権尊重の認識が著しく欠如し た方法による児童への所持品検査を実施するという事案が発生しました。
本市では、本件について、外部の有識者による専門的な見地からの意見の聴取を行いなが ら検証を進めておりましたが、その検証結果がまとまりましたので、報告いたします。
本件については、児童並びに保護者の皆様に深くお詫び申し上げますとともに、関係する 方々及び市民の皆様に多大なるご心配、ご迷惑をおかけし、深くお詫び申し上げます。
1 所持品検査の概要
一時保護所において、児童からの要望や苦情等を受け付けることを目的に設置している 意見箱の記入用紙1枚の所在が不明となりました。
この記入用紙を利用することにより、児童の個人情報等が流出し、退所後に児童が犯罪 等に巻き込まれる事態を防ぐため、職員が一時保護所内の捜索を行いましたが、発見でき ないまま、児童に対する衣服の着脱を伴う所持品検査を実施するに至りました。
その際の所持品検査の手法が、児童に対する人権の配慮に欠けたもので問題となったも のです。
2 検証の目的
本事案について事実を把握し、その発生の原因等を分析の上、問題点を抽出し、再発防 止策を講じることを目的といたしました。
3 調査の概要
(1)調査期間 平成27年12月17日から平成28年1月5日まで
(2)聞き取り対象者 一時保護所職員(非常勤職員含め50名)
(3)調査に使用した関係書類 一時保護所運営のてびき、一時保護所のしおり、
「やくそく」の基本、会議録、事故報告書、 ヒヤリハット報告書、勤務表
4 有識者からの意見聴取
上記の調査結果について、外部の有識者7名で構成する相模原市社会福祉審議会児童福 祉専門分科会児童相談所措置部会( 以下「児童相談所措置部会」という。) に報告し、本事 案に関する発生の背景や問題点、再発防止策等について専門的な見地からの意見聴取を行 いました。児童相談所措置部会は、平成27年12月から平成28年3月までに、4回開 催いたしました。
平 成 2 8 年 3 月 1 5 日 相 模 原 市 発 表 資 料
5 児童相談所一時保護所における所持品検査の検証報告書の内容
Ⅰ 検証について
Ⅱ 事案の概要
Ⅲ 経過及び対応等について
Ⅳ 調査により確認した事項
Ⅴ 児童相談所措置部会からの意見(要約)
Ⅵ 再発防止に向けた対応策
問合せ先 児童相談所 042- 730- 3500
児童相談所一時保護所における所持品検査の検証報告書
平成28年3月
相模原市
目 次
はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
Ⅰ 検証について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 1 検証の目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 2 調査の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 3 有識者からの意見聴取・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
Ⅱ 事案の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 1 所持品検査の実施時期・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 2 所持品検査の場所・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 3 所持品検査を受けた児童・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 4 所持品検査に関わった職員・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 5 所持品検査の方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
Ⅲ 経過及び対応等について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 1 事案発生までの経過・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 2 事案発生及びその後の対応・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
Ⅳ 調査により確認した事項・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 1 事案発生の背景・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 2 所持品検査の実施に係る経過・ ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・5 3 本事案に係る一時保護所の問題点・・・・・・・・・・・・・・・・・6
Ⅴ 児童相談所措置部会からの意見(要約)・・・・・・・・・・・・・・・8
Ⅵ 再発防止に向けた対応策 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・10 1 衣服の着脱を伴う所持品検査の廃止 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・10 2 職員が児童に向き合う意識の醸成と人権意識の向上 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・10 3 外部の専門家によるスーパーバイズの導入等 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 10 4 組織的対応のルール化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 5 良好な職場環境の創出・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 6 情報共有の強化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 7 児童相談所全体における組織的な取組・・・・・・・・・・・・・・11 8 他の自治体との連携強化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 9 リスク管理とコンプライアンス ・・・・ ・・・・・・・・・・・・12
参考(相模原市児童相談所一時保護所開設の経過、概要)・・・・・・・・13 1 開設の経過
2 一時保護所の概要
はじめに
本市では、児童相談所一時保護所(以下「一時保護所」という。)において、平成27年 夏頃に児童に対し実施した所持品検査について、外部の有識者からの意見聴取を行いなが ら検証を進めてきた。
これにより、明らかになった背景や課題、今後取り組むべき対応等について報告する。
Ⅰ 検証について
1 検証の目的
この検証は、本事案について事実を把握し、その発生の原因等を分析の上、問題点を抽 出し、再発防止策を講じることを目的とする。
2 調査の概要
(1)調査期間
平成27年12月17日から平成28年1月5日まで
(2)聞き取り対象者
一時保護所職員(非常勤職員含め50名)
(3)調査に使用した関係書類
一時保護所運営のてびき、一時保護所のしおり、「やくそく」の基本、会議録、 事故報告書、ヒヤリハット報告書、勤務表
3 有識者からの意見聴取
上記の調査結果について、相模原市社会福祉審議会児童福祉専門分科会児童相談所措置 部会( 以下「児童相談所措置部会」という。) に報告し、本事案に関する発生の背景や問題 点、再発防止策等について専門的な見地からの意見聴取を行った。
【児童相談所措置部会における意見聴取の経過】
開催日 審議内容
平成27年12月22日
・事案の概要及び対応について
・検証スケジュールについて
平成28年1月12日 ・事案の概要、経過、問題点について 平成28年2月9日 ・問題点、再発防止策について 平成28年3月8日 ・検証報告書について
【児童相談所措置部会の構成】 委員7名
(弁護士2名・医師2名・学識経験者2名・医療従事者1名)
Ⅱ 事案の概要
一時保護所において、児童からの要望や苦情等を受け付けることを目的に設置している 意見箱の記入用紙(以下「記入用紙」という。)1枚の所在が不明となった。
この記入用紙を利用することにより、児童の個人情報等が流出し、退所後に児童が犯罪 等に巻き込まれる事態を防ぐため、職員が一時保護所内の捜索を行ったが、発見できない まま、児童に対する衣服の着脱を伴う所持品検査を実施するに至った。
その際の所持品検査の手法が、児童に対する人権の配慮に欠けたもので問題となったも のである。
1 所持品検査の実施時期 平成27年夏頃(※ )
※ 児童の二次的被害のおそれがあることから、詳細な日時については記載していない。
2 所持品検査の場所
一時保護所内 学童ユニット(※ )
※ 学童女子・学童男子が生活をするスペース
3 所持品検査を受けた児童
学童女子9名(7歳∼15歳)、学童男子9名(7歳∼15歳)
4 所持品検査に関わった職員
・ 養護班担当課長(以下「担当課長」という。)(※ )
※ 一時保護所を所管する養護班を総括する職員
・ 学童担当SV職員(以下「学童SV」という。)(※ )
※ 職員に専門的指導及び助言を行う職員
【学童女子グループ】 職員2名、非常勤職員1名( いずれも女性)
【学童男子グループ】 職員2名、非常勤職員2名( いずれも男性)
5 所持品検査の方法
(1)学童女子
学習室で午後の授業を受けていた学童女子を一人ひとり浴室の脱衣所に呼び、児童に 対し趣旨を説明の上、同意を得て、1人の職員が、児童の身体が当該職員及びもう1人 の職員から見えないようバスタオルを児童の身体の前で広げた状態で、別の職員が、児 童が脱いだ衣服を1枚受け取り、記入用紙の有無を確認し、確認後、児童に衣服を返し、 次の衣服を脱いで渡してもらうという一連の行為を繰り返す方法で実施した。
(2)学童男子
午後の授業終了後、一時保護所内で自由時間を過ごしていた学童男子を一人ひとり学 習室に呼び、児童に対し趣旨を説明の上、同意を得て、男性職員又は児童自身が着衣を パタパタと払う方法で実施した。
Ⅲ 経過及び対応等について
1 事案発生までの経過
平成22年4月 児童相談所を開設
平成25年4月 児童相談所に一時保護所準備班(職員19名)を設置 平成26年4月 一時保護所を開設
事案発生までの間 一時保護所で記入用紙等を使用した児童間の個人情報等の交換を 3件確認
2 事案発生及びその後の対応
当日の午前 ・ 一時保護所において、記入用紙1枚の所在が不明となった。 ・ 職員が一時保護所内の捜索を実施した。
・ 所在不明の記入用紙は発見できなかった。 午後 ・ 学童ユニットにおいて、所持品検査を実施した。
・ 所在不明の記入用紙は発見できなかった。
・ その夜、所持品検査を受けた児童を担当する児童福祉司(以下「児 童福祉司」という。)が、衣服の着脱を伴う所持品検査の実施の情報を 得て、学童女子1人との面接の際に、そのことについて尋ねたところ、 不快な思いをした旨の訴えを確認した。
・ 児童福祉司は直属の上司(以下「支援班総括副主幹」という。)に報 告した。
翌日の午前 ・ 児童福祉司及び支援班総括副主幹が児童相談所長に上記の件につい て報告した。
・ 児童相談所長は、不適切な事案であると判断し、早急に対応を図る ため、総括副主幹以上による所内会議を招集し、事実確認を指示した。 午後 ・ 担当課長が所持品検査を実施した職員に事実確認を実施した。 翌々日以降 ・ 児童相談所長及び担当課長が、こども育成部長に事案の概要を報告
した。
・ 学童女子(既に退所した児童を除く。)へのヒアリングを実施した。
・ 学童女子(既に退所した児童を除く。)に謝罪した。
・ 子ども人権プロジェクトチームを新たに設置し、会議を13回開催 した。
・ 事案報告書を決裁処理(部長決裁)した。
・ 記入用紙及び意見箱の管理方法や設置場所について見直しを行った。
・ 人権に関する職場研修を2回実施した。
・ 一時保護所職員全員に対してヒアリングを実施した。
・ 児童相談所措置部会を4回開催した。(12月・1月・2月・3月)
Ⅳ 調査により確認した事項
1 事案発生の背景
(1)入退所時の所持品検査について
一時保護所では、児童の安全確保を目的として、刃物等の危険物の持込みを制限して おり、一時保護所の入退所時においては、児童に説明し、了解を得た上で、所持品の検 査を行ってきた。この入退所時の所持品の検査方法については、職員の経験や知識に基 づくいくつかの方法で実施されており、いずれも児童の権利擁護に配慮した方法として 認識されていた。
しかしながら、児童の尊厳を尊重した方法について、意識の統一は図られていなかっ た。
(2)児童の権利擁護の重要性と紙類及び筆記用具の管理について
国が示している児童相談所運営指針では、児童からの要望や苦情等を受けるための窓 口の設置など児童の権利擁護に努めることが求められていることから意見箱を設置して きた。一方、一時保護所では、退所後に児童同士が連絡を取り合うことによって、児童 に好ましくない影響が危惧されることから、児童同士が自身の住所、連絡先等を交換で きないよう、紙類及び筆記用具については、学習時間などに必要となる児童に貸し出す 方法で管理してきた。
(3)個人情報流出に対する職員の意識について
本事案発生前にも、一時保護所の学童ユニットにおいて、性被害を誘発するおそれが あるものも含め、記入用紙等を使用した児童間の個人情報等の交換を3件確認していた。
具体的には、
① 学童女子の洗濯物から、ツイッターのアカウントが記載された紙が発見された事案
② 複数の学童女子間で個人情報等の交換が行われ、中にはメモを下着の中に隠し持っ ていたり、居室から性被害を誘発するおそれのあるメモが発見された事案
③ 学童女子が落とした紙を確認したところ、退所した児童の個人情報が記載されてい たメモが見つかった事案
こうした事案を受け、一時保護所職員の間において、退所後に児童が犯罪等に巻き込 まれる事態を防止するため、個人情報等の交換を制限する意識がより一層高まった。
(4)個人情報流出防止対策について
過去に児童の個人情報等が流出するおそれのある事案が発生した際にも、人権尊重の 観点から個々の職員やグループ内では課題として認識し、その都度所持品検査の方法に ついて検討していた。
しかしながら、その検討は組織の一部に留まり、内容についても共通の人権意識に基 づいて所持品検査の是非まで踏み込んだものではなく、限定的に行われていた。
一時保護所としては、多角的な視点に立って発生時の対応や記入用紙の管理方法の見 直し等の未然防止策を検討するなど、所持品検査の在り方を含めた個人情報流出防止対 策について、組織的な対応を図ってこなかった状況があった。
(5)一時保護所職員への指導助言について
一時保護所職員は、平成26年4月の一時保護所開設以来、様々な課題を持つ児童へ の対応に苦慮していた。
また、実務経験が豊富でなかったことから、経験が浅く、さらに、専門的指導及び助 言(以下「スーパーバイズ」という。)が十分に受けられる体制ではなかった。
2 所持品検査の実施に係る経過
(1)所持品検査前の捜索及び指示
ア 当日の朝の引継前に、夜勤職員から担当課長に、記入用紙が減っているという内容 の報告があった。
イ 担当課長は、引継時に学童SVに対し、記入用紙の枚数を確認するよう指示した。 ウ 学童SVが記入用紙の枚数を確認したところ、本来10枚あるべき記入用紙が9枚
しかなかったため、1枚の所在が不明である旨を担当課長に報告した。 エ 担当課長は、学童SVに記入用紙を捜索するよう指示した。
オ 学童SVは、複数の職員に対し記入用紙の捜索を指示した。
カ 指示された職員は、一時保護所内を捜索したが、記入用紙は見つからず、その結果 を学童SVに報告した。
キ 学童SVは職員に対し、児童を対象とした記入用紙の捜索を行うように指示した。
(2)学童女子の所持品検査の実施
ア 職員は学童SVに対し、学習室で児童のポケットの中を確認する方法を提案したが、 学童SVは、その方法では不十分であると判断し、その旨を職員に伝えた。
イ 職員は、学童SVの指示を満たし、かつ、児童の人権に配慮したいくつかの方法に ついて検討を行った。
ウ その結果、前述(P2の5(1))の方法を選択し、学童SVに提案することとした。 エ 職員は、学童SVに実施方法について確認を行ったところ、学童SVは、提案のあ
った方法を認知し、実施するよう指示した。
オ 実施前に、再度、学童SVに実施について問題が無いか確認を行ったが、学童SV は不正使用の抑止にもなるため実施するよう指示した。
カ 職員は、前述(P2の5(1))の方法により実施したが、記入用紙は見つからなか った。
キ 検査終了後、記入用紙が見つからなかったことについて、学童SVに報告した。
(3)学童男子の所持品検査の実施
ア 職員は、所持品検査の実施方法について検討し、学童SVの了解のもと、前述(P 2の5(2))の方法により実施したが、記入用紙は見つからなかった。
イ 検査終了後、記入用紙が見つからなかったことについて、学童SVに報告した。
(4)引継ぎ及び児童からの訴えの確認
ア 日勤職員は、所持品検査を実施したことを夜勤職員に引き継いだ。
イ その夜、児童福祉司が衣服の着脱を伴う所持品検査の実施の情報を得て、学童女子 1人との面接の際に、そのことについて尋ねたところ、不快な思いをした旨の訴えを 確認した。
3 本事案に係る一時保護所の問題点
(1)意見箱及び記入用紙の管理について
一時保護所においては、児童相談所運営指針で求められている意見箱の他に、積極的 に発言できない学童女子に配慮して、「学童女子子ども会議用意見箱」を任意に設置して いた。両意見箱は並べて設置してあり、記入用紙については同じものを共同使用してい た。
記入用紙の枚数管理については、意見箱の中身と記入用紙置き場にある用紙の残数が 10枚になるよう、学童SVが管理を行っていた。
しかしながら、「学童女子子ども会議用意見箱」は一時保護所職員が開閉できる状態に あり、書き損じがあった場合には廃棄することもあったことや両意見箱で同一の記入用 紙を共同使用していたことは、枚数管理を厳密に行う上では課題があったと考えられる。
こうした状況において、当日記入用紙が1枚足りないことについて、児童が個人情報 の交換に使用したとは言い切れない状況で所持品検査を実施したことについては、性急 な対応であったと考えられる。
過去に確認した3件の事案(P4の1(3)の①、②、③)においては、記入用紙が 個人情報等の交換に使用されたものもあり、意見箱や記入用紙の管理の在り方について 検討する必要があった。
また、こうした事案が発生した場合等の対応方法について、統一した対応が図られる ようマニュアルの整備など、児童相談所全体での対応が不可欠であったと考えられる。
(2)所持品検査の必要性と緊急性の判断について
所持品検査は、これまで入退所時や紛失物があった際に実施してきたが、実施方法に よっては、児童の権利を侵害する可能性があるものである。
本事案については、職員が入退所時の所持品検査の方法を参考に、児童の権利を侵害 しない方法であると考えて行ったものであるが、その入退所時の所持品検査についても 定まった考え方や明確な根拠に基づいたものではなく、その都度、個々の経験や知識に より実施していた状況であった。
また、記入用紙については、刃物等とは異なり、切迫した危険性があるものではなく、 当日退所する予定の児童がいない状況においては、対応について十分に検討を行う時間 があり、緊急に所持品検査を行う必要はなかったものと考えられる。
所持品検査については、目的やその緊急性、検査の必要性、衣服の着脱や直接衣服に 触れる行為等の方法など様々な視点から検討され、実施されるべきものであることから、 その運用における一定の方針について、児童相談所全体でルール化しておくべきもので あったと考えられる。
(3)職員の意識及び経験について
一時保護所の開設後は、様々な背景をもつ児童の入所が相次ぎ、想定以上の困難に直 面することとなった。こうしたことから職員は、適時適切な対応についての判断に迷い、 児童に向き合うよりも、児童に問題を起こさせてはならないという管理意識が徐々に強 くなっていったことが考えられる。
開設に向けては、一部の職員を除き、大半の職員を他の自治体の一時保護所等へ派遣 し、業務を経験させるなど、必要な準備を行ってきた。
しかしながら、開設時には一時保護所職員としての実務経験が豊富でなく、また、開 設後、間もないことから経験の積み重ねやノウハウの蓄積が十分ではなかったと考えら れる。
(4)指示命令及び適時適切なスーパーバイズについて
本事案については、指示命令を行う立場の職員が十分な検討を行うことなく、職員が 提案した方法では記入用紙の捜索が不十分であると判断し、具体性に欠ける指示が行わ れたため、結果として衣服の着脱を伴う所持品検査の実施を命じるものとなってしまっ た。
また、指示命令を行う立場の職員の実務経験が豊富でなかったことから、児童を直接 支援する職員からの相談に対して、適時適切なスーパーバイズを行うことができなかっ たものと考えられる。
(5)職員間の情報の共有と組織的対応について
職員間の情報の共有については、土曜日・日曜日や夜間の勤務など変則勤務であるた め、担当職員全員が一堂に会する機会がなかったことなどもあり、職員間において情報 の十分な共有が図られず、児童への統一的な対応がなされない状況にあった。
また、所持品検査も含め一時保護所での様々な対応方法等については、会議で検討し 決定することとしているが、案件によっては結論に至らず、保留になるものもあり、統 一した基準がないまま対応せざるを得ない状況にあった。
Ⅴ 児童相談所措置部会からの意見(要約)
児童相談所措置部会の委員の方々から、専門的な見地から数多くの意見をいただいた。 類似する意見も多かったことから、要約し論点ごとに整理を行った。
1 当該所持品検査の妥当性と子どもに向き合う意識について
・ 所持品については、子どもの同意を前提に確認するもので、命令的に検査するもので はない。また、所持品検査を目的に衣服を着脱させることは、子どもの同意を得たとし ても、一時保護所に保護されている子どもは検査を拒みづらい状況を考えると、子ども の同意を得たことを根拠に所持品検査を行うことは肯定できず、子どもの権利を侵害し ていると言わざるを得ない。
・ 保護者からの虐待や非行など様々な課題を抱えている子どもを信じずに疑うことは、 子どもとの信頼関係を損ない、子どもの心を大きく傷つけることにつながるものと考え られる。
・ 本事案については、個人やグループで人権に配慮した方法で実施したとしても、子ど もだけに所持品検査を行ったことは、結果として子どもを疑うことになり、衣服の着脱 を伴う所持品検査を行った学童女子はもとより、所持品検査を行った学童男子について も子どもの尊厳に関わる配慮に欠けた行為であったと言わざるを得ない。
・ 一時保護には、子どもの権利を守る側面と、権利を制限する側面があるが、本事案は、 事故を起こしてはいけない、子どもを守らなければならないという管理的な意識の延長 線上で、行き過ぎた行為として起きてしまったものと考えられる。
しかしながら、一時保護所においては、どのような手段を用いても子ども同士の個人 情報の交換等を完全に防ぐことはできないことも事実である。
したがって、最大限子どもの権利を守ることに主眼を置き、子どもを管理するのでは なく、子どもに丁寧に働きかける関わりが必要である。
・ 所持品の確認等については、一時保護の特殊性と人権感覚のバランスについての判断 を伴い、その対応が難しいことから、基本的な考え方を整理するとともに、様々なケー スに対応できるよう、児童養護施設や少年院など他の施設の対応方法を学ぶことも必要 である。
・ 私物の持ち込みについては一律に禁止するのではなく、柔軟に対応する必要がある。
2 発生要因及び良好な職場環境の創出について
・ 本事案は職員個人が独断で行ったものではなく、学童SVに報告し、指示を得た上で 実施しており、組織として対応を行っていたが、職員及び組織としての経験やノウハウ の蓄積が十分でなく、発生した事案に対して適切な対応が行われなかった。
・ 本事案のような不適切な対応を防ぐには、日頃から職員間で子どもの支援について情 報共有や意見交換を行うことができる風通しの良い組織運営が不可欠である。
・ 各職員が学童SVや担当課長など指導的立場にある職員に、いつでも相談や提案等を 行えること、また、疑問が疑問のまま流れていかないようにすることが必要であり、さ らには組織的な検討・決定を行うことができる体制の構築が求められる。
3 事後の対応について
・ 本事案発生後、児童相談所内でプロジェクトチームを立ち上げ、職員に対し、人権意 識向上に向けたアンケートを実施し、自ら問題点について振り返りを行っていることは 評価できる。こうした取組を継続することが有効である。
・ 現状を評価し、改善点を明確にするため、一時保護所の運営にかかる第三者評価を実 施する必要がある。
・ 保護者への謝罪が遅かったように思われるが、こうしたことも含め危機管理に係る対 応を適切に図られるよう、準備・検討を行うべきである。
・ 事案の公表については、個人に不利益が及ぶおそれがある場合は、公表を控える場合 もあるなど必ずしも100パーセントの公表を前提とする訳ではないが、本事案は個人 の不利益には当たらないと思われるため、適切な時期及び方法で公表すべきであった。
Ⅵ 再発防止に向けた対応策
一時保護所に入所する児童は、2歳以上18歳未満までと年齢に幅があり、一時保護を 要する背景も様々である。
保護者からの虐待、非行、発達障害等それぞれに課題を抱えている児童にとって、一時 保護所が安全で心から安心できる場所となるために、児童が職員に対して安心と信頼を寄 せられるようになることが不可欠である。そうした環境が整って初めて児童は自身の課題 に向き合うことができる。
今後、このことを職員一人ひとりが自覚するとともに、一時保護所だけではなく児童相 談所全体で、児童の最善の利益のために、再発防止に向けた対応策に取り組んでいく必要 がある。
こうした認識のもとに、把握した現状や外部の有識者からの意見を踏まえ検証を行い、 以下のとおり具体的な対応策をまとめた。
1 衣服の着脱を伴う所持品検査の廃止
今後は、入退所時を含め、衣服の着脱を伴う所持品検査は原則実施しない。
一時保護所においては、刃物等の危険物の持込みを防ぐ必要があることから、私物の持 込みを制限しており、私物の持込みの確認を行う場合には、児童及び保護者の理解が得ら れるよう働きかけた上で実施することとする。
具体的な所持品検査の方法については、早急にマニュアルを整備し、これを徹底した上 で統一的な対応を図るとともに、その対応状況等については、組織として継続的に確認す る。
2 職員が児童に向き合う意識の醸成と人権意識の向上
一時保護所の運営において、職員は、管理的な手法に頼ることなく児童とともに課題の 解決を図るため、児童に向き合う意識を醸成することが重要である。
また、児童に対する支援について、職員が相互に児童の立場で確認し合い、人権感覚を 磨き合う中で、職員全体の人権意識を高めていく。
3 外部の専門家によるスーパーバイズの導入等
担当児童への理解や支援の方法などについて個々の職員が抱える実務上の課題に対応す るためには、職員に対し、豊富な経験や専門的な知識などに基づいた適時適切な指導等を 行う必要があることから、外部の専門家によるスーパーバイズの導入を図る。
また、日々の業務において、スーパーバイズを受けられるよう、実務経験豊富な人材の 確保に取り組むほか、児童の権利擁護等を目的とした有識者による第三者評価の導入につ いて検討していく。
4 組織的対応のルール化
児童相談所内のより緊密な連携を図るため、一時保護所において定期的に開催している 班会議(以下「班会議」という。)での検討結果については、上位の会議である所内会議に 報告することとし、必要に応じて児童相談所全体の課題として検討し決定していく。
また、一時保護所内で刃物等の危険物の持込みが確認された場合など、緊急の課題が生 じた際は、休日・夜間を含め、児童相談所の児童支援の決定会議である援助方針会議を臨 時に開催し、組織的な対応を図っていく。
5 良好な職場環境の創出
職員が皆で支え、協力し合い、相互の自由な意見交換、相談などを行い、職員一人ひと りが自信と安心感を持って児童を支援することができるよう、職員は日ごろから職員間の 良好なコミュニケーションの維持に努め、お互いに意思疎通を十分に図ることができる職 場環境の創出に取り組むこととする。
6 情報共有の強化
班会議については、情報共有を行い、組織で検討し、組織で判断していくことを定着化 できる貴重な機会であることから、可能な限り多くの職員が会議に参加できるよう、会議 開催に際しては、他の班の職員が児童対応を行うなど、児童相談所全体で取り組んでいく。
また、変則勤務により、当日勤務でない職員への情報伝達の方法及び朝夕の引継ぎの在 り方を再度見直すなど必要な措置を講じる。
7 児童相談所全体における組織的な取組
児童相談所職員は、一時保護所が児童の生活の場であるという認識を持ち、常に児童の 立場に立った施設運営に努め、職員間の相互協力体制のもと、児童の最善の利益のために 一丸となって取り組んでいく。
再発防止のための具体的な取組みとして、人権研修を継続的に実施するとともに、所内 の若手職員で構成された横断的な組織である「子ども人権プロジェクトチーム」が実施し たアンケート結果を児童への支援の振り返りやマニュアルの見直しなどに活用していくこ ととする。
8 他の自治体との連携強化
複数の一時保護所を有している神奈川県や横浜市、川崎市などとは異なり、本市の一時 保護所は1施設のみであるため、経験の積み重ねやノウハウの蓄積が限定的であることか ら、他の自治体との人事交流について検討を行う。
また、非行グループなどを一時保護する際には、児童の分散化による対応が必要な場合 もあることから、広域的な連携として他の自治体への一時保護委託について検討を行う。 さらに、一時保護所の運営上の共通課題等を検討するため、他の自治体の一時保護所を 総括する職員による会議の新設について提案していく。
9 リスク管理とコンプライアンス
(1)児童の権利擁護及び記入用紙の管理の在り方について
児童の個人情報等の流出を防ぎ、児童が犯罪等に巻き込まれることがないよう、児童 の権利擁護と情報管理を徹底し、職員の意識の向上に努める。
あわせて、記入用紙及び意見箱の管理方法や設置場所については、事案発生後、見直 しを行ったところであるが、意見箱の設置は、要望や苦情など児童の意見表明権を保障 するものであることにも十分配慮し、より適切な管理の在り方について検討し、必要に 応じて見直しを行う。
(2)報告や公表等について
人権侵害や虐待が疑われる事案が発生した場合には、適時適切に報告を行うとともに、 市パブリシティハンドブックや市事務専決規程などに基づき適切に対応する。
参 考
相模原市児童相談所一時保護所開設の経過、概要 1 開設の経過
(1)平成25年4月、児童相談所に一時保護所準備班(以下「準備班」という。)を設置
(2)設置当初は、設置準備事務に4名(事務職1名・社会福祉職2名・保育士1名)、他自 治体への派遣職員15名(社会福祉職12名・保育士3名)計19名の職員を配置
(3)派遣職員の派遣期間は、平成25年4月から12月までの9か月間とした。
(4)平成25年10月に新たに5名(社会福祉職1名・保育士4名)配置し、併せて児童 相談所相談班に所属していた1名(保育士)を所内異動により配置換えを行った。
(5)平成25年4月から12月まで、派遣職員全員での全体研修を計12回実施
(6)平成26年1月から3月まで、開設に向けた議論等を実施した。併せて、神奈川県県 北地域児童相談所一時保護所での引継ぎ研修及び市児童相談所の支援班や相談班の業務 研修を実施した。
(7)平成26年4月、一時保護所開設 2 一時保護所の概要
(1)定員及び対象年齢
定員 25名(幼児11名、学童男子7名・女子7名) 年齢 2歳以上18歳未満
(2)運営組織
※ ()内の数値は職員数:幼児Gの児童指導員(非常勤・夜間)は日中の児童指導員 が兼ねる。
(3)勤務体制
常勤職員8: 30∼17: 15(担当課長、学童SV、幼児SV、保健師、管理栄養士) ローテーション勤務者 8: 30∼17: 15(日勤)16: 00∼9: 30(夜勤) 児童指導員(非常勤特別職) 9: 00∼17: 15(日勤)17: 00∼9: 30(夜勤) 学習指導員(非常勤特別職) 9: 00∼17: 00
夜間指導員(非常勤一般職)17: 00∼9: 00 庁務技能員(非常勤一般職) 9: 00∼17: 00
平成27年4月1日現在